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健康診断オプションの腫瘍マーカー【第4回】遺伝子マーカーとの付き合い方

佐藤 浩昭 (さとう ひろあき) 筑波大学 水戸地域医療教育センター 呼吸器内科

癌は恐ろしい病気だ。出来ればなりたくないと、誰もが思っているだろう。早期発見、早期治療ができるように、検診や人間ドックを受診されている方も多い。今回のテーマは、診療や検診で登場する「腫瘍マーカー」について。測定結果で異常が出ていた際には、患者にどのように伝えようか、医師も悩んでいるそうだ。腫瘍マーカーとの付き合い方を考えるシリーズ連載を、専門家に執筆いただいた。

 20世紀に開発された「腫瘍マーカー」から「遺伝子マーカー」の時代となりつつあります。ごく少量の血液検体を用いることで、多くの癌についての情報や適切な治療薬の選択、さらには治療効果の判定、抗がん剤への癌の抵抗性(薬剤耐性)の情報などが判明する時代に突入しつつあります。このような便利さには多額のコストが必要であり、検査代が今までの「腫瘍マーカー」の時代からすると、桁違いということに私自身も驚かされています。しかしながら検査法の先行に治療法や保険制度が追い付いていないと診断はされたが治療法がない、あるいは治療法はあるが、違う癌腫の治療薬のため実際に診断された患者には保険制度上投与できないということが起こりかねないのではないかとの懸念があります。
 
 医療の世界も他の領域と同様に、人工知能が活用され変革の時代となることが容易に想像されます。実際に、肺癌のCT検診では2名の医師による読影の一方をコンピュータへの置き換えが既に現実のものとなっている時代ですが、こんなものではなく医療の根底からの急速な変革がもたらされることでしょう。癌の存在が「瞬時」に、「容易」に判明するということは、「早期診断・早期治療」、「治癒する(治る)」という観点からすると夢のような話で、とてもありがたい限りです。何時間も待合室で待たされ、何度も苦痛を伴う検査に通うことを考えると多くの患者さんにとって福音といえると思います。それでは癌の診断はされても「治癒不能」との判断が下された場合はどうでしょうか。不老不死でない限り残された時間をどう有意義に過ごすかが問題となるのでしょうか。心静かに過ごすことがどれだけ多くの人間に可能なのでしょうか。再生医療、置換医療が今より進歩するでしょう。再生医療、置換医療に該当しないとの判定する「マーカー」ができるのでしょうか。
 
 さて、「腫瘍マーカー」が中世の錬金術のような扱いになって、「21世紀の初頭にはこのような稚拙な検査が横行していた」とされるのでしょうか。その頃には、癌の検査も血液検査(あるいは採血も不要となるかもしれませんが)とCTのような画像検査のみで診断され、治療が施されるというような社会が、人間が人間らしく生きられる社会であること望みます。

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佐藤 浩昭 (さとう ひろあき) 筑波大学 水戸地域医療教育センター 呼吸器内科 1984年筑波大学医学専門学群卒 2009年より筑波大学水戸地域医療教育センター 教授 日本内科学会認定総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医