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一覧大人にこそ童謡を!【第2回】「アドラー心理学」とは
山西 敏博(やまにし としひろ) 公立 長野大学 企業情報学部教授
自分自身を高めよう!:『アドラー心理学』とは
「部下を叱ったら、かたくなになって仕事に影響が出てしまった……」
「何回注意をしても、子どもが勉強しないのよ……」
このような悩みは、日常生活の中で誰もが抱えるできごとでありましょう。そのような時、「人はどのようにすれば幸せに生きることができるのか」についての指針をわかりやすく示してくれるのが「アドラー心理学」なのです。
「アドラー心理学」とは、人間の悩みである「対人関係のもつれ」を解決の方向に導き、「人と人とが結びついている状態」にしていくことで、対人関係をより有効にしていくといった考え方です。「人は変わっていくことができる」を基に、5つの言葉をキーワードとしながら、前向きに進めていきましょう。
①【自分と他人の問題を分ける】:他人の課題に必要以上に立ち入らず、長い目で見守る
②【人からほめられたいという気持ちを捨てる】:「他人にほめられるために生きる」のではなく、「自分に正直」に生きる
③【見方を変える】:コップの中の半分の水を「もう半分しかない」と嘆くよりも「まだ半分ある」と、前向きに見る
④【未来の行動を変える】:「過去」は変えられない、だが、「未来」は自らの意思決定で変えられる
⑤【自分で決める】:「自分の人生」は「自分自身」で切り拓いていく
--どれも日常生活の中で気がつくことばかりではないでしょうか。
①は、本来は「子どもが勉強しないと将来が不安になってしまうから」という「親心」からの忠告で子どもに伝えているのですが、「子ども自身に自分の将来像を考えさせる」と、親自身が「これは子供自身の問題であるのだ」と「手放す」ことで、気持ちは楽になっていきます。
②は、「他人の目」を気にしすぎるあまり、自分の行動ができにくくなってしまうので、「それは本当に自分がしたいことかどうか」を見極める必要があります。
③は、老齢になっていった場合、「もう、うん十歳の老人だから……」ではなく、「うん十歳の人間だからこそ、家族や孫のために、私の経験を伝えていけるぞ」と考えることで、前向きなる「ひと花」を咲かせることができるのです。そうすることで、私たちはさらに成長していくことができるのです。これは第1回目に記しました【童謡メンタルセラピー】の手法にもつながっているのです。
④は、「過去」の失敗に対して「反省」はしても、「後悔」をすることなく、「未来」に向けて何かの目標を見つけて、それに向かって進んでいきましょう。そうすることで、希望ある日々を迎えていくことができるのである、という考え方なのです。
⑤は、これまでの考え方を集約して、全ての「自分の行動」を「自分自身」の意思で切り拓いていくことが望ましいのです。そうすることで、たとえ失敗をしたとしても「他人のせい」にするのではなく、「自分自身が決めた事」と捉えて、後悔をすることもなくなるでしょう。
「心理学」は、難しいものではありません。「こころ」を考えることで、皆さんの日々の生活に当てはめながら、これらの考え方を前向きに活かしていってほしいと願っています。そのことが震災や様々な災害からの復興にもつながっていくのです。
かく言う著者は、2017年9月、北海道胆振東部地震にて被災をしました。その時にも、これらの考え方で何とか乗り切ってきました。改めてこの場をお借りしまして、阪神淡路、東日本大震災を皮切りに、2019年5月、神奈川県・川崎市を始めとして起こってしまった数々の殺傷事件や、同年6年の新潟・東北地方での地震、また、7月、鹿児島県や熊本県・益城町を襲った九州地方での豪雨災害などで被害に遭われた方々に際しまして、心からのお見舞いを申し上げます。