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題 名『発達障害の子どもと生きる』松為信雄著

著者名
松為 信雄(まつい のぶお)
ISBN
9784779060786
出版年月日
2013年6月30日
価格
838円+税
投稿日
キーワード
評論
概要

幼少期から始められる取り組みや一般企業で働くための教育、大人の発達障害へのサポート法を丁寧に解説する。

発達障害者支援の専門家が最先端の教育・就労支援、親子のための生き方を記した決定版。

発達障害のあるお子さんには、一人ひとりの特性に合わせたキャリア教育、就労支援、生涯にわたって多くの理解と協力が必要です。症状について正しい理解を深めるだけでなく、どう育てていけばよいのか。幼少期から成人後に至るまで、お子さんの人生を支えていくために親が最も知りたかったサポート方法をわかりやすく解説。

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編集部より
「発達障害」という言葉が馴染みのものとなって久しい一方、そうした障害に悩む人々がいかに生きていくかという問いが解消されたわけではない。この問題は、ある意味で不可避のものとも言える。彼ら彼女らにはそれぞれの経歴、所属、環境があるからだ。つまり、発達障害というカテゴリーでもって個人を説明しつくすことなど到底できないということである。その意味でも、かけがえのない我が子という視点から彼ら彼女らを見守る保護者は、子どもたちの自立支援にとって特異な位置を占めているとみなすべきだ。

発達障害の子どもをもつ保護者達に著者が推奨しているのは、キャリア教育である。ここでの「キャリア」という語は、ライフキャリアを指している。文中の表現でいえば「職業生活を含む、その人の人生や生き方全体」(本文6頁より引用)のことだ。とりわけ「その人の」という箇所に重点を置くのであれば、ライフキャリアとはつまるところ自分らしく生きることだと言い換えてもいいだろう。職場や進路は、個人のもつ能力の発現の場として考えることができるのだ。

ところで、ハンディキャップを抱えているからこそ、我が子を厳しく──極端な物言いをすればどこか突き放して──育てたいと考えている保護者もいるかもしれない。ここで、障害者支援の文脈でしばしば引用される資料を紹介しよう。平成24年11月27日刊行の『TOKYO人権』第56号に収録された、熊谷晋一郎氏へのインタビュー記事である。そこで熊谷氏は「自立を目指すなら、むしろ依存先を増やさないといけない」と語っている。たとえ健常者であったとしても、何物にも依存することなく生きることは不可能だ。自立していると思っていても、その実我々は幾重ものサービスやテクノロジーに頼りきりで生きている。依存と自立とは相互排他的な理念ではないのだ。だとすれば、親が我が子の個性を把握したうえで積極的に加担することは、自立の励ましにこそなれど妨げには決してならないだろう。

最初に述べたとおり、障害者支援の肝となるのは個々人への視線である。本書127頁でも言及されているとおり、例えば障害者であることを明かされた際の子どもの反応は、安堵する者もいれば衝撃を受ける者もいるように、時に正反対ですらありうる。そうした特性を誰よりも近くで見守り、支えられる立場にあるのは、やはり他でもない親なのではないだろうか。

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著者
松為 信雄(まつい のぶお)