題 名熱ショック転写因子HSF1を介した新たな細胞死の経路
- 発行日
- 2007年9月
- 投稿日
- 2019.12.27
- 発表者名
- 林田直樹
- 所 属
- 山口大学大学院医学系研究科
- キーワード
- 細胞死 TDAG51 熱ショック転写因子
- 要 約
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熱ショック転写因子 (heat shock transcription factor, HSF) は、一群の熱ショック蛋白質 (heat shock protein, Hsp) の発現制御に関わる転写因子群として知られ、哺乳動物細胞では3種類の HSF (HSF1, HSF2, HSF4) が明らかにされている。このうち、HSF1 は蛋白質の変性を感知し、Hspの発現制御において中心的な役割を担い、温熱ストレスをはじめとする様々なストレスに対する耐性の獲得を通して細胞生存に働いている。
一方、我々は活性型HSF1 トランスジェニックマウス、ならびに HSF1欠損マウスの解析から、HSF1が細胞死を導く働きがあることを示唆する結果を得ていた。本稿では、HSF1 が Hspとは全く逆の働きを持つ細胞死促進因子 TDAG51 (T-cell death associated gene 51)を直接誘導することを示し、これまで知られていた細胞防御能だけでなく細胞死誘導能を併せ持っていることを明らかにした。さらに、このHSF1-TDAG51経路が生体内でも重要な機能を担っていることを明らかにした。
この経路と蛋白質変性にともなう細胞運命の決定との関わりについて概説する。
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- 林田直樹 筑波大学附属高校卒業後、同年東京大学に入学。同大学院で博士号取得後、学術振興会特別研究員として金沢大学医学部で実験動物学・発生学、およびプリオンの研究を行う。特別研究員期間中に山口大学医学部(大学院医学研究科)の生化学第二教室助手に着任、講師昇格の後、2015年から自身のグループを持ち、真のアンチエイジングを目指した「老化学」研究を開始。アルツハイマー病等の神経難病の治療薬開発研究も進め、これまで2回特許申請を行っているほか、発表した論文は神経難病に関するものをはじめとして、がんや血管病、遺伝子発現やタンパク質の立体構造解析など複数の領域に渡っているが、全て老化に関わる内容となっている。日本基礎老化学会評議員。英文ジャーナル「Experimental Animals」Editor。本論文は、12年前に、筆者が山口医学会から若手の基礎医学研究者に贈られる「中村賞」を受賞した際に、その受賞の対象となった研究の概要を日本語でまとめたものである。